ウィキペディア等の情報をあたかも自分が直接見聞きしたように話す人の心理
学術的、医学的に検討し、構造化すると以下のようになります。
1. 自己呈示と印象操作
自己高揚
Goffman (1959) の自己呈示理論に基づけば、人は他者からの承認を得るために、自身を肯定的に見せようとする行動をとります。この行動は、意識的・無意識的に行われ、情報源を偽ることで、博識で経験豊富な人物を演出し、優越感や満足感を得ることを目的とします。
社会的承認欲求
Festinger (1954) の社会的比較理論は、人は自身を他者と比較することで自己評価を行うと提唱しています。知識を誇示することは、他者からの承認や賞賛を得て、自己肯定感を高め、集団内での地位を向上させるための手段となりえます。
印象操作
Leary & Kowalski (1990) は、印象操作を「他者からの評価をコントロールするための戦略的行動」と定義しています。情報源を偽る行為は、意図的に望ましい印象を与え、対人関係を有利に進めるための手段として用いられる可能性があります。
2. 自己欺瞞と認知バイアス
知識ギャップの補完
人は、知識の欠如による不安や劣等感を解消するために、無意識的に情報源を歪めて記憶することがあります。これは、自己イメージを維持するための防衛機制として作用すると考えられます。
記憶の歪み
Loftus (1975) の研究は、記憶は固定されたものではなく、後から改変される可能性を示唆しています。繰り返し情報に触れることで、それが自身の経験と混同し、あたかも直接体験したかのように錯覚してしまう可能性があります。
3. 病理的な虚言
虚言症 (Pseudologia fantastica)
American Psychiatric Association (2013) の DSM-5 では、虚言症は「誇張や虚偽を含む話を病的に繰り返すこと」と定義されています。虚言症者は、現実と空想の区別が曖昧になり、自己中心的で注目を浴びたいという欲求から、嘘をつくことが習慣化している場合があります。
4. コミュニケーション戦略
物語化
Bruner (1990) は、人は物語を通して世界を理解し、他者とコミュニケーションをとると主張しています。情報を個人的な体験として語ることで、物語性を高め、聞き手の関心を引きつけ、共感を促す効果が期待できます。ただし、この場合、悪意や欺瞞の意図は低いと考えられます。
補足
発達心理学
幼児期には、空想と現実の区別が曖昧で、想像上の出来事をあたかも真実のように話すことがよく見られます。しかし、成長と共に現実認識能力が発達し、このような行動は減少していくのが一般的です。
神経科学
fMRI を用いた研究では、嘘をつく際に前頭前皮質などの脳領域が活性化することが示されています。これらの領域は、意思決定、抑制、社会 cognition に関与しており、嘘をつく際の認知プロセスを解明する手がかりとなります。
結論
ウィキペディア等の情報をあたかも自分が直接見聞きしたように話す行動は、多様な心理的要因が複雑に絡み合って生じる現象です。自己呈示、認知バイアス、病理、コミュニケーション戦略など、様々な視点から分析することで、その行動の背景にある心理メカニズムをより深く理解することができます。
倫理的配慮
上記の情報は、学術的な視点からの分析であり、個別の行動を診断したり、断定したりするものではありません。行動の背景には、個々の性格、生育環境、精神状態など、様々な要因が影響している可能性があり、安易なレッテル貼りは避けるべきです。
参考文献
- American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.). Arlington, VA: American Psychiatric Publishing.
- Bruner, J. (1990). Acts of meaning. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human relations, 7(2), 117-140.
- Goffman, E. (1959). The presentation of self in everyday life. New York: Anchor Books.
- Leary, M. R., & Kowalski, R. M. (1990). Impression management: A literature review and two-component model. Psychological Bulletin, 107(1), 34-47.
- Loftus, E. F. (1975). Leading questions and the eyewitness report. Cognitive Psychology, 7(4), 560-572.
- https://ca.wikipedia.org/wiki/Amn%C3%A8sia_dissociativa
- https://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%9D%B8%EC%83%81_%EA%B4%80%EB%A6%AC